掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
Pustulosis Palmaris et Plantaris (PPP)

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは?

掌蹠膿疱症(PPP)は、主に手のひらや足の裏に膿の溜まった膿疱や水膨れ、赤みやカサカサが出る病気です。掌は手のひら、蹠は足の裏って意味です。日本では、約14万人ほどの方が罹っています。中年の女性、喫煙者に多い傾向があります。ときに手のひら、足の裏以外にも症状が出ることがあります。10-30%の患者さんに、主に鎖骨部分の関節痛(胸鎖関節痛)を伴うことがあります。

原因

PPPの原因はまだよく分かっていません。しかし、慢性扁桃炎、慢性副鼻腔炎、虫歯、歯周病などの慢性的な感染症(病巣感染)が発症に関わっていることが知られており、扁桃の摘出手術や歯科治療をすると症状が改善することがあります。そのほか、歯科金属アレルギーや喫煙も発症に関わっていると考えられています。また、特定の遺伝子を持つ人は掌蹠膿疱症を発症しやすいとの報告もあります。

歯根部膿瘍

歯根部膿瘍

慢性扁桃炎

慢性扁桃炎

症状

先行して手のひらや足の裏に水ぶくれが発生し、これが次第に膿疱へと変化していきます。その後膿疱はかさぶたとなり、剥がれ落ちます。症状が強い人は、爪の変形をきたしたり、腕や足、体に皮疹が出ることもあります。PAO (Pustulotic Arthro-Osteitis)と呼ばれる胸のあたりの骨関節の痛みが出ることもあります。
なお、膿疱には細菌・ウイルスは存在しないため、まわりの人にうつしてしまう心配はありません。

掌蹠膿疱症における皮疹の形態変化

Pustulo-vesicleを探すPustulo-vesicleを探す

検査

  1. 皮膚生検:
    皮膚の一部を切って病理検査を行い、細胞をみて診断する方法です。局所麻酔下で、4mmほど皮膚をくり抜いて、傷は2針ほど縫います。臨床的に診断が難しい場合に行うことがあります。
  2. ダーモスコピー:
    皮疹の性状を拡大してみる検査です。PPPは、小水疱と膿疱に混じて、水疱の中央に白色の小膿疱を有するpustulo-vesicleと呼ばれる皮疹がみられます。簡易ですが、見つからないこともしばしばあります。
  3. 血液検査:
    糖尿病や甲状腺疾患などの合併、病巣感染を調べるときに行います。
  4. レントゲン検査:
    病巣感染を調べる際に、副鼻腔や歯列のレントゲンを撮影します。当院にはレントゲン設備がないので、連携施設にお願いすることになります。
  5. 金属パッチテスト:
    金属アレルギーの有無を調べる唯一の検査方法になります。貼付日、48時間後判定、72時間後判定と週に3回の通院が必要な検査で、非常に労力が要りますが、金属アレルギーの有無を調べる唯一の検査ですので、PPPの症状が良くならない場合はやはり受けることをお勧めします。当院は、パッチテストパネルのみのため、歯科金属パッチテストをご希望の場合は、連携施設へ検査をお願いしています。

治療

まずは原因・悪化因子の除去が最も大事です。

  1. 禁煙指導:
    喫煙により発症、悪化があることが分かっています。喫煙によるダイオキシン、ニコチンがそれぞれAHR (Aryl hydrocarbon receptor)やアセチルコリンレセプターに結合します。その結果、症状が悪化することが機序として考えられています。喫煙者でPPPが治ることは考えにくいため、タバコを吸っている方は、やめる事を強くお勧めします。
  2. 歯科治療:
    虫歯や歯根部膿瘍、歯周病などの慢性細菌感染がある場合は、それらの治療が必要です。また歯科金属アレルギーのある場合は、歯科金属の除去も有効です。
  3. 耳鼻科治療:
    慢性の副鼻腔炎や慢性の扁桃腺炎がある場合は、それらの治療が有効です。抗生物質の内服や扁桃腺は摘出術も時に必要となります。

次に対症療法になります。

  1. 外用療法:
    ステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬などが有効です。
  2. 紫外線療法:
    ナローバンドUVB, エキシマライト, PUVA, UVA1などが有効です。当院ではエキシマライトによる治療を行っています。
  3. 内服治療(軽いもの):
    ミノサイクリンなどの静菌性抗菌薬の内服
    ビオチン(ビタミンH)の内服
    エトレチナート(チガソン)の内服 など
  4. 内服・注射治療(重たいもの):
    シクロスポリン(ネオーラル, 免疫抑制剤)の内服
    アプレミラスト(オテズラ, PDE4阻害薬)の内服
    メソトレキサート(リウマトレックス, 免疫抑制剤)の内服
    グセルクマブ(トレムフィア, 抗IL-23抗体)の注射
    但し、シクロスポリン、アブレミラスト、メソトレキサートは保険適応外となるため、クリニックでは、1, 2, 3の治療を組み合わせながら、重症者にはグセルクマブを投与する、といった治療が主となります。
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