やけど（熱傷）
やけどは、料理中など日常生活中にも起こり得る比較的身近な外傷です。
また、熱によって起こるやけど「熱傷」以外にも、いくつかの種類があります。
熱傷
熱湯、（料理で使用する）高温の油などとの接触で、熱によって起こるやけどです。
低温熱傷（低温やけど）
カイロ、湯たんぽ、こたつ、ホットカーペットなど、比較的低温度の熱源に、長時間接触することで起こるやけどです。
電撃傷
電気が身体の中・体表を通ることで生じるやけどです。釣り竿・凧の電線との接触でも起こります。
化学熱傷
強い酸性・アルカリ性の薬剤によって起こるやけどです。重症化することがあるので、注意が必要です。受傷後は、速やかに救急外来を受診することをお勧めします。原因物質によって、それぞれ対応が少しずつ変わってくるので、何で受傷したかをしっかりと把握する必要があります。近年は、ポケットに入れた電子タバコの電池の駅が漏れることによる化学熱傷が増えているようです。
受賞直後は、化学物質の付着した衣類は速やかに脱ぎ、30分以上かけて、大量の水で酸・アルカリを洗い流すようにして下さい。
症状の重症度
| 重症度 | 症状 |
|---|---|
| Ⅰ度 | 皮膚が赤くなります。また、痛みを感じることができます。 |
| 浅達性Ⅱ度 (SDB) |
やけどをした部位に水ぶくれが生じます。水ぶくれの底は赤くなっています。また、痛みを感じることができます。 |
| 深達性Ⅱ度 (DDB) |
やけどをした部位に、底の白い水ぶくれが生じます。痛みを感じづらくなります。 |
| Ⅲ度 | 皮膚が黒色・白色に変色し、痛みを感じられなくなります。 |
やけどは、受傷直後の重症度の判定が難しいことがあります。翌日になってから水ぶくれが生じる、皮膚の色が変化するということもありますので、受傷直後に軽症に見えたとしても、1週間程度は注意が必要です。
また、深達性Ⅱ度以上のやけどは、傷跡、動かしづらさが残る可能性が高くなります。
自分でできる応急処置
すぐに5分以上冷やす
水道の流水で、5～30分冷やしてください。広範囲に及ぶ場合には、お風呂のシャワーを使ってください。氷、氷水での冷却は、損傷を助長することがありますので、行わないでください。
ステロイド外用薬を塗る
やけどは炎症によって、より深くまで達する可能性があります。流水などで冷却したのちは、自宅にあるステロイド外用剤（できるだけ強い方が良い）を塗布するようにして下さい。
やけどは閉鎖したほうが、痛みが緩和されます。ステロイドを塗った上で、食品用のラップで覆うのも良いと思います。
受診の目安と皮膚科クリニックで行う治療法
受診の目安
- やけどをした部位が、手のひらよりも大きい
- 皮膚が赤くなり、水ぶくれがある
- 流水で冷やしても、強い痛みが治まらない
軽症に見えても、深く組織が損傷している可能性があります。少しでもご不安がある場合には、お気軽にご相談ください。
浅いやけどの治療
(Ⅰ度、浅達性Ⅱ度)
発赤のみの場合は、主にステロイド軟膏を用いた治療を行います。
水疱がある場合、水疱はできる限り破らず保護します。
水疱が破れた場合、創部は流水によって洗浄し、受傷初期はステロイド外用による治療、炎症が落ち着いたのちは被覆剤や創傷治癒を促進させる外用剤などを用いて治療します。当院ではメロリンガーゼという傷にくっつきにくい特殊なガーゼを用いて治療しています。
深いやけどの治療
(深達性Ⅱ度、Ⅲ度)
深いやけどで皮膚の血流がなくなると、皮膚が死んだ状態、いわゆる「壊死」となります。
壊死した皮膚は、局所麻酔下で除去（デブリードマン）する必要があります。範囲が広い場合には、身体の他の部位から、皮膚を移植する治療が必要になることもとあります。治癒後も、必ず瘢痕が残ります。
数十年の歳月をかけて癌化することもあり、注意が必要です。（熱傷瘢痕癌）
後遺症・やけど痕について
浅いやけどでも、色素沈着などの後遺症が残ることがあります。ただ、次第に軽減が期待できます。色素沈着の予防としては、患部の紫外線対策が有効です。
一方で深いやけどの場合は、後遺症・やけど痕が残る可能性が高くなります。やけど痕には、肥厚性瘢痕やケロイドが挙げられます。これらが関節に形成された場合には、関節を動かしづらくなる瘢痕拘縮が起こることがあります。
治療として肥厚性瘢痕やケロイドに対する外用薬の使用・圧迫療法などがありますが、十分な効果が得られない場合には外科的な手術が行われます。
